2016年2月23日火曜日

コーチングのスキル② 質問する (後半)

コーチングスキル②は「質問する」でしたが
ちょっと長くなったので、半分にしました。
今日は後半です。


コーチは質問をします。
効果的な質問ができるようにと訓練もします。
効果的とは、新たな気づきがある質問であったり、視点が変わる質問であったり。
自分の考えを深める質問であったり、行動が変わる質問であったり。

実例をご紹介します。

コーチを学ぶ人たちのトレーニングをやっているときのことです。
あるクライアントが、息子との関係がちょっとギクシャクしているという。
「どんな母親であればいいのかをコーチしてほしい」ということで、
みんなで質問を出し合いました。お母さんに投げかける質問です。
私はこんな質問はどうかと思って、してみました。

「息子さんに、『どんな母親になってほしい』と聞いたら、彼はなんと答えるでしょうね」

彼女は、「ガーンと頭を殴られた感じがした」と言いました。
息子のことを考えている自分が、母親からの一方的な視点でしかなかった
ということに気づかれたんですね。
あなたが思う理想的な母親像と、息子が思う母親がこうであってくれたら、
というのは違うんです。
「そのふたつは違うんですよ」って言っても気づかない。
自分で気づかないと自分のものにならないのです。

もうひとつ、こんなことも。

会社で私の隣に座っていたお母さん社員。小学生の男の子がふたりいます。
彼女いわく、
「息子が全く私の言うことを聞かない。私は叱ってばかり。
 自分が嫌になってしまう。どうすればいいでしょうね。」
私は言う。
「子どもは、親にああしろこうしろって言われてもなかなか聞けるものではないよ。
 あれこれ言うのはやめる代わりに、君はどうしたいって質問することできる?」

彼女の顔には、そんなことできるわけない、と書いてあるようでした。
数か月経った頃、彼女が突然言うのです。
「最近、息子が変わってきた。
 自分から、『これ、こうしたいんだけど、どうだろう』って
 言うようになった。なんか、ああしろこうしろって言わなくても、
 自分で行動するようになった」
というのです。
決してそれは、怒られる前に確認しておこうというものではなく
自分で考えるようになったようだと言うのです。

彼女は命令するのをやめていたのです。
「あなたはどうしたいの?」と聞く方法に変えていたんです。
すると、息子も変わったのだそうです。

効果的な質問といっても、すぐに「あ、こういうのが効果的なんだな」と
わかるものではないでしょう。
しかし、気づき、視点、考えを深める、行動する、といった
変化をもたらす質問は、イエス、ノーで答えられるクローズドクエスチョンでは
難しいというのはおわかりになると思います。

一方で、「念を押す」とか「確認する」場合には、
クローズドクエスチョンを意識して使います。
「来週までに、できますか」「これ、やっていただけますか」みたいにですね。
コーチはクライアントに対してときどきプレッシャーをかけます。
そういうときには、クローズドクエスチョンです。

さて、「質問する」というスキルの中で、
ちょっと気をつけていただきたいフレーズがあります。
使い方によって、相手の印象が変わる疑問詞です。

「なぜ?」という疑問詞。

たとえば、
「なぜ、できなかったの?」 は、
「ちゃんとできなくちゃダメじゃない」 というメッセージになりがち。
「なぜ、やらなかったの?」 は、
「やれって言っただろう。どうして私の言うことが聞けないんだ」
否定形と「なぜ」が重なるだけで、ニュアンスが変わります。

「何があれば、できたと思う?」
「障害になったものは何?」

と言い換えてみるだけで、メッセージは全く変わります。
人格を否定するような質問になりがちな「なぜ」。
行動に着目した質問にカタチを替えるほうが人は答えやすいものなのです。

質問はあくまでも相手の思考や感情を解放し前進させるもの。
コーチのための質問ではなく、クライアントのための質問を
こころがけたいものです。

2016年2月13日土曜日

日々のこと_20160213

今週月火と、某社鎌倉研修所に行ってきました。
新入社員を指導する役割を与えられた、若手から中堅社員を対象に
コミュニケーションスキルの研修を行ってきました。


二日間の研修で行うことは
 ・新入社員世代を理解する
 ・ケーススタディから自分たちがどうするかを検討する
 ・コミュニケーションスキルを習得する
 ・トレーナーの心得を認識する
5年目から15年目の社員たちは、新しい知識や気づきをそれぞれに得て、4月の新人入社に向けて準備を開始しました。


新人のお世話係をここまでトレーニングする会社を私は他に知りません。
大卒新人が3年間で35%が退職するという日本企業の中で
わずか3%しか辞めない秘密があるように思います。

私にとっても有意義な二日間ではありました。
ありがとうございました。

2016年2月6日土曜日

コーチングのスキル② 質問する

コーチングを知りたいという方のために、前回から
コーチングのスキルについて書いています。

第2回は、「質問する」というスキルです。


質問することも、コーチングでは大事なスキル。
 「コーチは質問しかしない」とか
 「コーチングとは質問すること」と言う人もいるくらい。

誤解ではあるのですが、
それほどまでに「質問する」というスキルは
クライアントの思考や行動を左右させるものなのです。

質問にはいろんなタイプがあります。

クローズドクエスチョンとオープンクエスチョンが、大分類。
イエス、ノーで答えられるクローズドクエスチョン。
考えないと答がうかんでこないオープンクエスチョン。

オープンクエスチョンの中にも、限定質問と拡大質問があり
誰? どこ? いつ?など、答がわかっているのが限定質問。
考えないと答が出てこないのが、拡大質問。
What?  Why?  How?  何? どうして? どんなふうに?などです。

ただし、使い方によっては、拡大質問の疑問詞も、限定質問になります。

 昨日のパーティでは何を食べましたか? 

は限定質問。
昨日食べたものというのは、限定されてしまう。
思い出しさえすれば答がわかるわけで、
過去の質問はほぼ限定質問になります。
 
 来週のパーティ、あなたが幹事をするとしたら、
 どんなパーティにしたいですか。

これは拡大質問。
あなたの意見や意志、考えや感情が答を導き出す質問です。

拡大質問は、人間は思考をめぐらします。
未来の質問は多くが拡大質問になります。

コーチは、クライアントが考える質問をします。
特に、未来に向けた質問をたくさんします。
すると、クライアントの頭がどんどん回ってきます。
頭が回るとどうなるかというと、
オートクラインというのが起こります。
自分で話していることで、自分の頭が整理されてくる。
明確になってくる。確信するようになる。
そんな経験ありませんか。

オートクライン(Autocrine)は細胞生理学の言葉。
細胞が分泌するものが、他者ではなく自分に影響を与える機能のこと。
思考が巡るとでもいうのでしょうか。
コーチの質問によって、自分がどんどんと考えを進めていく。
考えを進めるだけでなく、行動するようになる。
行動することで、変化を手に入れ、達成感を味わい、
さらに変わっていくことができる。
一連のプロセスを経験すると、
自発的に、そして自律的に行動するようになります。
ですからコーチは質問をするわけです。

質問するときには注意すべきことがありますが
それはまた次回に書きましょう。


質問のスキルを簡単にまとめておきます。

 相手に考えさせる、気づかせるような拡大質問。
 過去を確かめる質問よりも、未来に向けた、思考を展開させる質問。

コーチがそんな質問をこころがけて会話をしています。


あなたは質問をされるとどんな気分になりますか。
いい質問だなと質問はどんな質問ですか。

2016年2月1日月曜日

日々のこと_20160201

2月になりました。
15年ほど前からお付き合いのあるコーチが、先月
ヒヤシンスを持って事務所を訪ねてくれました。
水裁ポットで育てるとばかり思っていたヒヤシンス。
孤独もいいけど、群れる球根もかなりいい感じ。

花言葉は、「スポーツ」「ゲーム」「遊び」「悲しみを超えた愛」
ヒヤシンスの語源であるヒュアキントスを失った
アポロンの悲しみが由来とか。

愛、といえば、個人的には
「愛とは、愛する者の生命と成長を積極的に気にかけることである」
というE・フロムが好きですが。